2012年3月29日木曜日

ライカレンズを全部買う その4 [90ミリの巻]

前回書いた50ミリはライカの標準レンズである。何が「標準」なのか?
最初のライカ(1925年発売Leica I )についていたレンズが、ライツ・アナスチグマット50ミリF3.5だったので50ミリが標準レンズと呼ばれるようになった。
小型カメラの始祖と呼ばれるライカが基準になったものが結構ある。そもそも35ミリフィルムサイズの24×36ミリの画面サイズのことをライカ版という。
現在のデジタル一眼レフの「フルサイズ」と呼ばれるものも、このライカ版の24×36ミリが基準になっている。

で、50ミリを標準としてそれより焦点距離の短いものを「広角レンズ」(40ミリ位までは標準レンズに含まれるので35ミリ位からが広角レンズと呼ばれる)焦点距離の長いものを「望遠レンズ」という。
たとえば、100ミリの望遠レンズは、100÷50=2 なので2倍の望遠、500ミリだと、500÷50=10 なので10倍の望遠レンズになる。
10倍の望遠レンズで撮影すると、10メートルの距離にあるものが1/10の1メートルの距離にあるように写る。
今は一眼レフで300ミリの望遠レンズくらいは当たり前になってしまったので、望遠と言っても135ミリが限度のレンジファインダーにおいては望遠レンズはあまり人気がない。
一眼レフに300ミリを付けてのぞくと6メートルの距離にいるライオンが1メートルの距離にいるように拡大されて見えるけれど、ライカに135ミリを付けてのぞいてもちっとも拡大されず、ファインダーのフレームが小さくなるだけ。なので、あまり人気のないライカの「望遠レンズ」が今回のテーマ。
ライカの90ミリについて。
確か僕が最初に買った90ミリは「エルマー90ミリF4 沈洞式」だったと記憶している。レンズとしては1830年代からある物で、スクリューマウントの太鏡胴から細鏡胴、Mマウントと外装の変遷があった後、同じ3群4枚のレンズ構成の物を沈洞させてコンパクトに収納できるようにしたものだ。仕掛けも凝っていて、完全にレンズを使用状態まで引き出さないとピントリングが回らない構造になっており、うっかり沈洞したまま撮影することを防いでいる。古い設計のレンズなので比較的柔らかな描写でクラシックな写りだ。沈洞すると50ミリと同じくらいの大きさになるのでM3に付けっぱなしにして良く持ち歩いた。
次に購入したのが「テレエルマリートM90ミリF2.8」の後期の4群4枚構成のもの。エルマーに比べるとシャープでコントラストも高く写りの性格の違いがハッキリしている。外観は細身で「テレ」が付くレンズ構成のせいかとてもコンパクトで50ミリ標準レンズと見まごうほどの小ささだ。
さらに一つ前の「テレエルマリート90ミリF2.8」に初期5群5枚構成レンズが気になりネットで探してみた。こちらのレンズは比較的短命で、すぐに4群4枚構成に切り替わっている。比較的レアな為4群4枚より高価である。見た目には太めのレンズなので「ファット」と呼ばれ後期と区別されている。前期と後期を撮り比べた事はないが前期の方が柔らかな描写をするような印象がある。
この「ファット テレエルマリート90ミリF2.8」が90ミリの中では一番気に入っており、出番が最も多い。
次に購入したのが「エルマーC90ミリF4」
このレンズはライカCL用に販売されたもので、他のMボディに付けるとピント精度に問題が出る場合があるという。
僕のM6は2台とも問題なくピントは合致した。M3の時代にはボディのピント精度調整のため距離計連動コロを左右に動かして調整した物があるらしく、その場合には問題が出ることが多いようだ。以前ミノルタCLE用に購入した「ロッコール90ミリF4」と基本構成は同じはずだがロッコールは売ってしまい、ライカCLを購入したので、それに合わせて再度買ってしまったわけだ。

「エルマー90ミリF4 沈洞式」
「テレエルマリートM90ミリF2.8」
「テレエルマリート90ミリF2.8」ファット 
「エルマーC90ミリF4」

これだけあれば90ミリは充分だろうと思う。他には「ズミクロン90ミリF2」があるが、明るいが、重くて高いので興味なし。
ところがある日、
第二次大戦直後、ドイツからのレンズ供給が不足した為 Leitz New York が企画しアメリカのウォーレンサック社が製造したレンズがあることを知ってしまった。
「ウォーレンサック ベロスチグマット90ミリF4.5」である。
ウォーレンサック ベロスチグマットには50ミリ、90ミリ、127ミリの3種類あったようだが興味を持ったのが90ミリF4.5である。
ネットで探してみると、比較的簡単にしかもそれほど人気はないようで、値段も安かった。
安さに惹かれてアメリカから入手した「ベロスチグマット90ミリF4.5」は、鏡胴はスクリューマウントのエルマー90ミリと同じデザインで[Leitz New York]の刻印がある。安かったせいもあるがレンズの程度があまり良くなくスリ傷が多い。コーティングの問題もあってか写りはフレアーっぽいものであった。
おそらく「ウォーレンサック」のせいではなく個体差の問題だと思う。

そして、その個体差の問題を見極めるため「ウォーレンサック ラプター90ミリF4.5」もその後購入した。
ラプターはベロスチグマットの後期の物で名称を変更しただけでレンズはまるで同じものだ。

そんなわけで、
90ミリは6本。
最後に購入したラプターに関してはまだ一枚も写真を撮っていない。
なので『「ベロスチグマット」と「ラプター」両ウォーレンサックレンズの個体差による描写の比較』に関しては謎である。

まだまだ続くぞライカレンズ。