僕は三脚を使いません。
正確には、
僕は「ほとんど」三脚を使いません。
唯一、必ず三脚を使うレンズが、今回紹介するお気に入りレンズ「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」を使うとき。
80-200ミリと言えばニッコール望遠ズームの代名詞になるくらいの歴史のある人気ズームレンズ。
最初の80-200ミリは1969年に発売されたF4.5のもので、このレンズ初期のズームレンズにしては抜群の画質でヒットした。新聞社のカメラマンが43-86ミリと80-200ミリの2本のレンズでニュース写真を撮っていてアマチュアカメラマンには80-200ミリは高嶺の花で、あこがれのレンズだった。このレンズはマルチコーティング、Ai、レンズ構成の変更などマイナーチェンジを繰り返し1981年頃までロングセラーを続け80-200ミリF4にモデルチェンジした。同時期にE70-210ミリF4も発売されて、同焦点域の望遠ズームの人気は継続した。MF時代の最終時期1982年にAi-sニッコール80-200ミリF2.8が発売されたが、重さが1.9キロ、フィルター径が95ミリもある巨大お化けレンズで「バズーカか?」と揶揄される上、値段も高くヒットには至らなかった。
そしてAF時代に入り「AF80-200ミリED F2.8」がコンパクトにまとめられて、価格も購入しやすい価格帯になり、またしてもヒットレンズになった。1987年に発売されたこのレンズも「D」になり、ズームリングとピントリングを別にして三脚座が使えるようになった「Ai AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>」へとマイナーチェンジされて現在も販売が継続されている。
その間に「AF-S80-200ミリF2.8」、モデルチェンジした「AF-S VR70-200ミリF2.8」、さらにモデルチェンジした現行「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II」と変化しつつ人気を博している。
僕は、フィルムカメラ時代はズームレンズはあまり使わなかったので、望遠レンズは85ミリF1.4、105ミリF2、180ミリF2.8、300ミリF2.8を使い回していた。デジタル初期には、取材ものはAPS-Cボディにコンパクトなズームレンズを使い、ポスターや表紙、グラビア撮影にはブローニーフィルムの645を使っていたので、明るいズームレンズは使っていなかった。その後2008年にニコンD3をメインカメラとして使い始め、100%デジタル撮影に切り替えた。
APS-C時代には「AF-S VR 18-200ミリ」をメインレンズとして使い、D3になってから「AF-S VR 24-120mm f/3.5-5.6G IF-ED」をメインに使っていた件は前回書いた通り。さて、望遠側がちょっと足りないと、フルサイズデジタル用に買ったレンズが「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED」フィルター径が67ミリと小さく、全体にコンパクト。300ミリ側の開放がF5.6と暗かったが「開放で撮影すれば背景もボケるだろう」と小ささに惹かれメインの望遠ズームレンズとして使い始めた。その頃は「18-35」「24-120」「70-300」三本のズームレンズですべての仕事がこなせると思っていた。
それまではブローニーの645で150ミリF2.8を開け気味にしてボカして使っていたグラビア撮影でも、D3に70-300ミリを付けてメインで使い始めた。さすがにボカすためには70ミリより300ミリ側を使いたいのでブローニーカメラ同様に三脚に付けて使っていた。ところが「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED」には三脚座がない。D3を三脚に付け70-300ミリを付けると何とも頭でっかちでバランスが悪い。2~3回目のグラビア撮影の時、心配していたことが起こった。雲台をフリーにして撮影していたのだが、モデルに動きを指示するためカメラを持っていた両手を離した時、レンズの重みで雲台に着いたままのカメラが90°前倒しになりレンズ先端部が三脚の足の部分に激突した。
三脚座なしの70-300のバランス |
レンズの重みで先端が三脚に激突 |
冷や汗が出た。
翌日、ニコンの新宿サービスセンターに持ち込むと、ぶつけたときの衝撃でVR部分の可動レンズが偏った状態で動かなくなっていた。もちろんすぐに修理を依頼した。
決してVRが悪いんじゃなくて僕が悪いんだが、それ以来「VR 70-300mm」をグラビア撮影で使うことはなくなった。また「VR 70-300mm」を使うときは必ず手持ちで使うようになった。「VR嫌い」になったのもこのときからだ。
代わりに購入したのが「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」。
機動性よりも「明るさ」
三脚に付けたときのバランスを考えて「三脚座」
三脚に付けて使うため「VR不要」
そんな条件で考え、中古レンズを探して購入した。
当時販売されていた「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR 」新品は値段も高い上、「VR 70-300mm」で懲りたVRがついているので却下。しかしもう一本の現行品「Ai AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>」はAF-Sではないためにこれも却下。最良の選択が「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」中古で10万円を切った値段で購入した。
購入後すぐにニコンサービスセンターでチェックを受け、すぐにテスト撮影をした。開放F2.8ではどの焦点距離でも「周辺光量落ち」がかなりあって最低でもF4まで絞らないと問題になる。ボケは問題なくきれいで、ピントや画質も申し分ない。すぐにグラビア撮影の主力レンズになった。
僕はグラビア撮影の時、同じシチュエーションで「決めカット」と「遊びカット」の両方を撮る。
衣装を見て、その衣装にあった撮影場所を決める。
どこまで背景を入れてどの程度ボカすかを考えカメラポジションを決める。
モデルにレフをあて、光をコントロール、完成写真を目指して動きや表情を突き詰めていく。
このときに使うレンズは必ず今回の「AF-S 80-200mm F2.8D」である。決めカットOKで遊びカットを撮る。
カメラは手持ちで、レンズは明るめの標準ズーム。
モデルをぐるぐる回転させたり、自分も立ったり座ったり、時にはモデルと手をつないで一緒に走りながら撮影する。
まるでムービーを撮っているかのような撮り方で、ピントもブレも気にしない。
こんな遊びカットで思わぬ良い写真が撮れることが結構あり、これがメインカットになることも良くあるのだ。
そんなわけで、
僕は「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」以外では三脚を使いません。
70-200F2.8クラスを手持ちで使うならいざ知らず、三脚使うなら当然VRはいらないわけで、ならばこのレンズ、最良の選択だと思います。
だって安いし・・・。
AFの80-200の方を使っているのですが
返信削除純正のテレコンがつかないのもあって
奮発して70-200を買おうかと思っていたのですが
読ませていただいて
とりあえず現行のままにすることにしました
貴重な情報ありがとうございます
私はこのレンズの前タイプを使っています。出来上がりに関しては非常に満足する状況ですが、最近変な虫が騒ぎ出しEFレンズのLタイプを今狙ってました。
返信削除そちらの紹介など読んでみたいです。
こんにちは。先日70-210のM領域の件で書き込みさせて頂いた者です。
返信削除こちらのブログ、とっても楽しく読ませて頂いています。
過去記事のフィクション?ストーリーもグッと引き寄せられる魅力のある文章で、楽しいですね。文才のある方とお見受けしています。
こちらのブログに影響されて、手持ちの80-200直進ズーム(AF 2代目)を手放して、
AI AF-S 80-200 2.8D ED(IF) と、AF-S 70-300 4.5-5.6 VR(旧型)を手に入れました。
直進ズームの方はコンパクトで良かったのですが、近距離撮影用には作られていないようで不便がありましたが、このAF-Sは最短撮影距離でもとってもクリアに描写されて値段も手頃で大変気に入りました。自分は手持ちが多いので台座を完全に外せるところも気に入っています。少々嵩張るので旅行等ではやはり4.5-5.6 VRの出番もありそうです。
あまり更新されていないようですが、このブログにはとても感謝しています。これからも気の向いたときに是非書いて下さいね。
楽しみにしてます^^
お読みいただきありがとうございます。
削除それにしても、同じレンズを購入なさったとは・・私も責任重大・・・
自分が使っているカメラ・レンズをネタにして書いているため、最近はネタ切れで更新が途切れております。
最近、ニコンD850を使い始めましたので・・構想を練っております。