2013年12月17日火曜日

僕のお気に入り「NIKKOR-S Auto 35mm F2.8、NIKKOR-P Auto10.5cm F2.5」


オールドニッコールレンズの復活

 


 今回紹介するレンズは2本ともかなり古い。
一眼レフ用ニッコールレンズは1956年の「ニコンF」の販売から始まっている。「F」が販売された6月に同時に販売されたレンズは50/2 105/2.5 135/3.5の3本だったようだ。それから2ヶ月遅れて販売されたのが35/2.8である。その、最初期のニッコールレンズから「NIKKOR-S Auto 35mm F2.8」「NIKKOR-P Auto10.5cm F2.5」をご紹介したい。

 このレンズが販売された当時、僕はまだ生まれたばかりだったので、ニコンには興味がなかった。実際に購入したのは、10年位前だろうか。ハッキリ覚えていないが、中古カメラ店のジャンクレンズの箱か、ヤフオクのジャンク品を1,000円か2,000円くらいで買ったと思う。なぜこんなに安いかというと2本とも「非Aiレンズ」だからだ。

 1956年に誕生し、現在のデジタル一眼レフまで変わらない「普遍のマウント」と呼ばれているニコン「Fマウント」だが、実際は様々な変遷があって、必ずしも「完全互換」とは言い切れない。
 カメラとレンズはマウントを介して様々な情報をやり取りしている。最初期の「Fマウント」はボディ側から自動絞りの開閉のレバーを操作し、レンズ側から絞り値情報を伝えるカニの爪が備わっていた。その後、TTL時代に合わせての「Ai化」にともない開放F値情報が新たに加わり、絞り情報がカニの爪からAi式露出計連動ガイドに切り替わった。そして、カメラはAF時代に突入。ミノルタ、キヤノンは時代の変化に合わせるため既存のマウント(ユーザー)を切り捨て、AF時代に合わせた新マウントを導入した。その時もニコンは「Fマウント」を替えず、新たにAF駆動カップリングと電気接点を追加した「AiAF」として対応、頑ななまでに「普遍のマウント」にこだわった。新たな情報系が加わるにつけ、不要な情報系が省かれることもあり、本当に「普遍のマウント」なのか、とも囁かれもした。すでにだいぶ前になくなっている「カニの爪」、「G」レンズになってからは「絞りリング」が省かれた。
 そして、デジタル時代になった。
AF化の時に旧マウントに諦めをつけ、マウント径を大きくしていたキヤノンはこのとき非常に有意な立場に立った。初期のデジタル一眼レフカメラはAPS-Cサイズのセンサーだったが、いずれはフルサイズセンサーの時代になる。このときニコン「Fマウント」はマウント径が小さいがゆえフルサイズセンサーには対応できないと言われたのだ。かくしてキヤノンは2002年フルサイズデジタルカメラ「EOS 1Ds」を発売、2005年の「EOS 5D」の発売でデジタル一眼レフ市場の優位性を圧倒的のものとした。
 ニコンはこの間「普遍のマウント Fマウント」を継承し、APS-Cデジタルカメラに合わせた「DXニッコール」で対抗し、「AiAF」から絞りリングを無くした「G」、レンズ内モーターを採用した「AF-S」へとマウントの情報伝達系を変更していった。
 そして2007年キヤノンに遅れること5年、フルサイズセンサーを搭載した「ニコンD3」を発売、不可能を可能にしたのだった。フルサイズセンサーのFXボディ、APS-CセンサーのDXボディそれぞれに対応したFXレンズとDXレンズだが、このレンズも「FXボディにDXレンズ」反対に「DXボディにFXレンズ」の互換性が成されている。キャノンの場合APSセンサーボディ用のEF-Sレンズはフルサイズセンサーボディには安全性のため装着できない。

 前置きがものすご~く長くなったが、早い話、50年以上前の「オールドニッコールレンズ」も今のニコンデジタル一眼レフに使えると言うことだ!
 なんでこんな古~いレンズを引っ張り出したかというと「ニコンDf」が発売されたからだ。「ニコンDf」は操作系がフィルムカメラ時代のダイヤル操作を主体としたクラシカルなスタイルで、且つ今までのニコンデジタルカメラになかった機能として「非Ai方式レンズ」の装着を可能にした。ニコンF5以降のボディ、もちろんデジタル一眼レフボディの場合すべてのボディに「非Ai方式レンズ」を装着することが出来なかったので、このDfによって初めて「非Ai方式レンズ」をニコンデジタル一眼レフに付けることが可能になったわけだ。
Nikkor-S Auto 35mm F2.8























NIKKOR-P Auto 10.5cm F2.5













で、
やっと今回の2本のレンズが登場するわけだが、
今回登場する「NIKKOR-S Auto 35mm F2.8、NIKKOR-P Auto10.5cm F2.5」は「非Aiレンズ」であって「非Aiレンズ」でない。昔はニコンサービスセンターに「非Aiレンズ」を持って行くと2~3,000円で絞り環を「Ai方式」に交換してくれたのだが、とっくの昔のこのサービスは終了してしまった。構造上はなぜ「非Aiレンズ」が今どきボディにつかないかというとボディの「露出計連動レバー」が絞り環にぶつかってしまうだけなのだ。
「ならばレンズの絞り環を削ってしまえ」と、
今回のレンズは「僕」が「非Aiレンズ」を「Ai化」したレンズなのだ。なのでわざわざ
「ニコンDf」を買わなくてもデジタル一眼レフに装着可能なのだ。
写真の「10.5cm F2.5」の絞り環を見て下さい。白い部分が削った部分。
まずはレンズの絞り環を外し、
開放F値が同じF2.5のAiレンズを参考に、
出っ張った部分の残してすべてを削る。
これで絞りリングのAi化完了。
絞り環をレンズに戻して、ボディに付けて動作を確認する。



一本目の「10.5cm F2.5」は「Aiレンズ」を参考にして真面目にせっせと一日かけて削ったのだが、
上部の白い部分だけ削った
二本目の「 35mm F2.8」は取り付け可能なことと、「露出計連動レバー」の代用ができる事のみで削ったので、手間もずいぶん簡単だった。
こうしてわずか1,000円程で買った「オールドニッコールレンズ」を「Aiレンズ」としてD600に取り付けた。

セットアップメニューから「レンズ情報手動設定」で焦点距離と開放絞り値をセットしておけば絞り優先自動露出が可能で、フォーカスエイドでピント合わせも出来る。
便利かと言えば、確かに不便である。しかし、AF以前のカメラ操作を考えれば特別不便なわけでもないし、何よりもデジタルの場合撮影直後に写り具合をモニターで確認することが出来る。

 あえてここでは一本ずつのレンズの善し悪しは記さないが、ズームレンズや超広角、超望遠あるいは極端にF値の明るいものではない一般的な焦点距離のレンズは、すでに50年前でも完成の域に達していた。35mmも105mmも素晴らしい写りである。この時代のレンズで気を付けなくてはいけないのは「色」だろう。ガラスの質のせいで黄色みを帯びているものが多い。経年変化や焼けで黄色くなったものもある。そもそも当時はモノクロ写真しかなかった時代だからこれもいたしかたない。しかし、デジタルカメラの場合ホワイトバランスを調整すれば色かぶりも克服できる。
 何よりもお薦めなのは「オールドニッコールレンズ」は安い。
ヤフオクをざっと見ただけで1,000円以下で買えるレンズが何本も出ている。
絞り環削りはお薦めするわけではないが、ヤスリ一本とマイナスドライバーがあれば簡単にできる。工作が得意な方はぜひトライしてみて下さい。

 ゆっくり、じっくり操作を楽しみながら写真を撮るにはうってつけ。
「オールドニッコールレンズ」でスローフォトを楽しもう。

APS-Cボディにも装着可能。制約はあるが撮影もできる。

2013年12月11日水曜日

僕のお気に入り「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D (IF) 」


僕は三脚を使いません。
正確には、
僕は「ほとんど」三脚を使いません。
唯一、必ず三脚を使うレンズが、今回紹介するお気に入りレンズ「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」を使うとき。

 80-200ミリと言えばニッコール望遠ズームの代名詞になるくらいの歴史のある人気ズームレンズ。
 最初の80-200ミリは1969年に発売されたF4.5のもので、このレンズ初期のズームレンズにしては抜群の画質でヒットした。新聞社のカメラマンが43-86ミリと80-200ミリの2本のレンズでニュース写真を撮っていてアマチュアカメラマンには80-200ミリは高嶺の花で、あこがれのレンズだった。このレンズはマルチコーティング、Ai、レンズ構成の変更などマイナーチェンジを繰り返し1981年頃までロングセラーを続け80-200ミリF4にモデルチェンジした。同時期にE70-210ミリF4も発売されて、同焦点域の望遠ズームの人気は継続した。MF時代の最終時期1982年にAi-sニッコール80-200ミリF2.8が発売されたが、重さが1.9キロ、フィルター径が95ミリもある巨大お化けレンズで「バズーカか?」と揶揄される上、値段も高くヒットには至らなかった。
 そしてAF時代に入り「AF80-200ミリED F2.8」がコンパクトにまとめられて、価格も購入しやすい価格帯になり、またしてもヒットレンズになった。1987年に発売されたこのレンズも「D」になり、ズームリングとピントリングを別にして三脚座が使えるようになった「Ai AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>」へとマイナーチェンジされて現在も販売が継続されている。
 その間に「AF-S80-200ミリF2.8」、モデルチェンジした「AF-S VR70-200ミリF2.8」、さらにモデルチェンジした現行「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II」と変化しつつ人気を博している。

 僕は、フィルムカメラ時代はズームレンズはあまり使わなかったので、望遠レンズは85ミリF1.4、105ミリF2、180ミリF2.8、300ミリF2.8を使い回していた。デジタル初期には、取材ものはAPS-Cボディにコンパクトなズームレンズを使い、ポスターや表紙、グラビア撮影にはブローニーフィルムの645を使っていたので、明るいズームレンズは使っていなかった。その後2008年にニコンD3をメインカメラとして使い始め、100%デジタル撮影に切り替えた。
 APS-C時代には「AF-S VR 18-200ミリ」をメインレンズとして使い、D3になってから「AF-S VR 24-120mm f/3.5-5.6G IF-ED」をメインに使っていた件は前回書いた通り。さて、望遠側がちょっと足りないと、フルサイズデジタル用に買ったレンズが「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED」フィルター径が67ミリと小さく、全体にコンパクト。300ミリ側の開放がF5.6と暗かったが「開放で撮影すれば背景もボケるだろう」と小ささに惹かれメインの望遠ズームレンズとして使い始めた。その頃は「18-35」「24-120」「70-300」三本のズームレンズですべての仕事がこなせると思っていた。
 それまではブローニーの645で150ミリF2.8を開け気味にしてボカして使っていたグラビア撮影でも、D3に70-300ミリを付けてメインで使い始めた。さすがにボカすためには70ミリより300ミリ側を使いたいのでブローニーカメラ同様に三脚に付けて使っていた。ところが「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED」には三脚座がない。D3を三脚に付け70-300ミリを付けると何とも頭でっかちでバランスが悪い。2~3回目のグラビア撮影の時、心配していたことが起こった。雲台をフリーにして撮影していたのだが、モデルに動きを指示するためカメラを持っていた両手を離した時、レンズの重みで雲台に着いたままのカメラが90°前倒しになりレンズ先端部が三脚の足の部分に激突した。

三脚座なしの70-300のバランス
レンズの重みで先端が三脚に激突
 落下したわけではないし、見た目も壊れたようには見えなかったのでそのまま撮影を継続した。ところがロケ撮影が終了して仕事場に戻ってPCで拡大してみておかしなことに気がついた。ピントを合わせたところは合っているのだが周辺が合っていない。たとえば、人物を正面から300ミリで撮影すればつま先から頭のてっぺんまでピントが合うはずだ。ところが顔にピントが合っているが、足がボケている。どこからおかしくなったのか写真をつぶさにチェックしてみると、レンズを三脚にぶつけたところからのようである。

冷や汗が出た。

 翌日、ニコンの新宿サービスセンターに持ち込むと、ぶつけたときの衝撃でVR部分の可動レンズが偏った状態で動かなくなっていた。もちろんすぐに修理を依頼した。
 決してVRが悪いんじゃなくて僕が悪いんだが、それ以来「VR 70-300mm」をグラビア撮影で使うことはなくなった。またVR 70-300mm」を使うときは必ず手持ちで使うようになった。「VR嫌い」になったのもこのときからだ。
 代わりに購入したのが「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」。
機動性よりも「明るさ」
三脚に付けたときのバランスを考えて「三脚座」
三脚に付けて使うため「VR不要」
そんな条件で考え、中古レンズを探して購入した。

 当時販売されていた「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR 」新品は値段も高い上、「VR 70-300mm」で懲りたVRがついているので却下。しかしもう一本の現行品「Ai AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>」はAF-Sではないためにこれも却下。最良の選択が「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」中古で10万円を切った値段で購入した。
 購入後すぐにニコンサービスセンターでチェックを受け、すぐにテスト撮影をした。開放F2.8ではどの焦点距離でも「周辺光量落ち」がかなりあって最低でもF4まで絞らないと問題になる。ボケは問題なくきれいで、ピントや画質も申し分ない。すぐにグラビア撮影の主力レンズになった。
 
 僕はグラビア撮影の時、同じシチュエーションで「決めカット」と「遊びカット」の両方を撮る。
衣装を見て、その衣装にあった撮影場所を決める。
どこまで背景を入れてどの程度ボカすかを考えカメラポジションを決める。
モデルにレフをあて、光をコントロール、完成写真を目指して動きや表情を突き詰めていく。
 このときに使うレンズは必ず今回の「AF-S  80-200mm F2.8D」である。決めカットOKで遊びカットを撮る。
カメラは手持ちで、レンズは明るめの標準ズーム。
モデルをぐるぐる回転させたり、自分も立ったり座ったり、時にはモデルと手をつないで一緒に走りながら撮影する。
まるでムービーを撮っているかのような撮り方で、ピントもブレも気にしない。
こんな遊びカットで思わぬ良い写真が撮れることが結構あり、これがメインカットになることも良くあるのだ。

 そんなわけで、
僕は「Ai AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)」以外では三脚を使いません。


 70-200F2.8クラスを手持ちで使うならいざ知らず、三脚使うなら当然VRはいらないわけで、ならばこのレンズ、最良の選択だと思います。
だって安いし・・・。